第一章  少年 〜a boy〜




きよし この夜...
星は 光り...









『クリスマスは 大切な人と過ごす日』





そんなこと
わかってるさ







12月24日
p.m9:00

ガキが外を出歩く時間帯じゃない、なんていう時代はもう終わっていると思う。
だいたい社会からして小学生を10時まで勉強させる世の中なのだ。
俺の場合、勉強は嫌いじゃないし、塾の友達もいるし、なにより家から逃げ出せる恰好の居場所だから
そんな社会の批判をする気は更々ない。
でも今はそれも憂鬱な時がある。

あいつらのせいじゃない。

ただ俺が勝手にあいつらの顔を見たくないだけ。

自分の親は俺をこんな時間まで勉強させるんだ、と悪態をついているけど家に帰ればそれなりの、温かい家族が迎えてくれる。
縛られているようで、実は包んでいてくれている。
それを当たり前のように生きているあいつらが俺をイラつかせる。

「あーあ。」

重たい息を吐きながら、俺は繁華街をゆっくり、なるべく遅く歩いていた。

家には
帰りたくなかった。




俺の両親は今、わざわざ立たなくてもいい分岐点に立っていた。
世に言う『離婚』というやつだ。
家に帰れば母さんは俺に愚痴をこぼし、父さんが帰ってくれば二人は近所もはばからずに
大声で喧嘩をする。

何が原因なのかはわからない。

多分、あの人たちもとうに忘れているんじゃないかと思うほど長い間泥沼状態なのだ。
もう最近じゃ相手のあらを探してはけなし、ののしり、残った感情は憎しみしかないように見える。

昨日の話題に俺のことがのぼった。
親権はどちらが取るかという話だったけどあの人たちは俺の存在など気にも留めてないのだ。
そんな人に俺の親権を預けていいのだろうか?

疑問なんて浮かべてみるけど、俺にはどうすることもできない。

前は二人が言い争っている中に割って入ったこともあった。「喧嘩しないで」と。
でも聞き入れてくれたことなんてなかった。


俺の存在は消えつつある。

あんな場所には

帰りたくない。