第二章  少年と夜の空 〜the stars glitteres in the frosty air〜




「家出でもしよっかなぁ...」
ため息とともに空を仰いだ。

狭い空は地上と反対に真っ黒で、
でも星が、所々で瞬いていた。

ぼんやりと、へぇこんなとこでも星がみえるんだぁとか考えてたら

「ん!?」

へんなものが目に入った。
いや、別にへんなんかじゃない、至って普通のだ。
白い服を着た子供で――俺と同じくらい――たぶん男。

ただ、おかしいのはそいつがどうのじゃなくて、そいつのいる場所がおかしかった。

「あいつ...なんであんなとこにいるんだ!?」

俺はあれから――星が云々...から視点を変えてはいない。
未だに顔は上を向いている。

そう、あいつは雑居ビルの屋上にいた。
しかもあれは明らかに――フェンスを越えている。

「おいおいおい...」

冗談じゃない。お前は12月24日こんな時に自殺でもする気か!?
こっちはただでさえ色々あって気が滅入ってるってのに、お前はさらに俺を胸くそ悪くさせる気なのか!?


気がつくと俺は雑居ビルの中を猛ダッシュしていた。
どうやって入ったのかは覚えていない。

階段を駆け上がりながらいろんな疑問が頭をよぎった。
視力は悪い方じゃないと思うけどそれでも人並みだ。
なのに、どうして六階もあるこのビルの屋上に人がいるのが見えたのか、しかもあんなはっきりと、とか、あの時、どうして周りの人に注意を促さなかったのか、とか、ガキの俺なんかが行ってもどうこうできるのかとか...



なんとか屋上まで辿り着いてその扉を思いっきり開け放った。

瞬間、しまったと思った。もっと静かに、そっと近寄って捕まえたほうが良かったんじゃないか、と。
何しろ、あいつはさっきよりもう一段階進んで、今はあの狭い縁に立っていたのだ。

ついでに両手をポケットにつっこんで。



そこにはいつバランスを崩してもおかしくないほどの冷たくて痛い風が吹いていた。